「インプラントが折れる」

先日、ニュースである芸能人が「インプラントが折れてささった」という発言をしていました。ネットニュースでご覧になられた方もいらっしゃると思います。その記事には折れたと思われる理由や、どのような形でどの部分が折れたなどの詳細がなく、具体的には良くわからなかったので私なりに少し考えてみました。

ままず、インプラントは、インプラント本体(ネジの部分)、アバットメント(接合部品)、クラウン(人工歯)の3つのパートで一つの歯を形成します。基本的には、何かの大きな力がかかりますとインプラント本体を守るために接合部分が折れるように材料や形状が設計されています。そうすることによって、骨と一体になっているインプラント本体が折れたり割れたりすることを防ぎます。もし、インプラント本体が折れてしまうと、それを取り出すには外科的な処置が必要になり、我々の体に大きな負担をかける事になります。一方、アバットメントや人工歯の交換は体に負担をかけずにできます。尚これは、同じ会社のインプラント本体と接合部品を使っている場合の話ですので、他社のものとの組み合わせではその限りではないかもしれません。次に、折れ方としては、棒状である接号部分は通常は横断的に折れます。つまり、断面が余り鋭角には折れないというのが基本的な考えです。しかし、残念ながら「ささる」ということが起こったようなので、ご本人にとってはとても不幸なことであったと思います。

歯科医の方にお聞きしてみたところ、やはりこうしたインプラント体とその接合部品が折れたり壊れたりすることは本当に少ないながらもあるようです。どれくらい少ないかというと、1%未満、つまり1000人に何人という感じです。原因としては、患者様に合った適切なインプラント体ではなかった、とか、埋入角度や深度がわずかに差異があった、患者様の噛む力が強かった、などの要素が一つでなく複合して起こります。そしてこれらの事は、最大限の注意を払っても起こり得ると思います。なぜなら、まず大前提として、人それぞれに最適な治療というものが違うためです。すなわち、一人一人に100%それぞれに適切なテーラーメイドの治療をしなければならないからです。その為、治療を行う際に参考にする前例も「似たような症例」があったとしても「全く同じ症例」などは無いと言う事になります。従って治療は歯科医の判断や技術に依るところが大となるのです。

私どもはこうしたリスクがあることを良く理解したうえで、将来起こるかも知れないリスクを最小限に出来るようにすべての情報を先生方にお渡し、安全で確実な治療計画を建てて、実行できる施設を探すことが求められます。

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