医療機器に関しての法律と課題

少し専門的な話になりますが、以前から話題になっている未承認製品の使用について触れてみたいと思います。これは新製品輸入販売時期の諸外国と日本の違いがあることが大きな要因です。まずは医療製品に関する法律と企業の責任についてお話しします。我々は未承認品を使用した治療を受ける事もありえますので、知っていても損はないと思ってお読みください。これは我々患者に使用された製品のアフターサービスに関わる重要な点です。


医療機器に関する法律と企業の責任

日本での医療機器に関する法律は「医薬品医療機器等法」と呼ばれ、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の事です。お聞き及びの方もおられると思いますが、以前は「薬事法」と呼ばれていた法律です。こうした法律は同様に諸外国にもあります。特に米国は食品医薬品局(FDA)による「食品・医薬品・化粧品法(FDC法)」が有り、非常に厳しく運用されています。実際に人の健康や命にかかわるために、米国では過去に違反して担当役員や社長が罰せられ刑務所入りした例もあります。

さて日本に戻りますが、「医薬品医療機器等法」は、その名の通り日本で医療用として販売される全ての製品について、日本で製造販売もしくは輸入販売する会社にその製品の品質、有効性及び安全性を担保させ、製造販売責任を持たせることが目的です。国はこれにより販売責任の所在、つまり、市場に出た後の製品の瑕疵責任の所在を明確にしています。

日本の医療用と呼ばれる製品の製造販売業者は、この法律に従って材料の材質や製造方法、保管方法など細部にわたって承認申請書に記載して国の審査を受け、その後承認や認証を取得したものしか日本では販売できません。会社はこの法律の遵守のために、担当責任者を含めて数名の社員を雇用しなければなりません。そして、販売する製品は国の認定機関で製品検査を行わなければなりません。その後、基準を満たしたという検査結果を承認申請書に添付して申請することになります。このような過程を経て厚生労働省又は国の第三者認証機関から承認等を取得しないと販売できません。製品は健康に及ぼす程度によりランク分けされ、審査承認の管轄が決まっています。輸入販売会社は、実際の販売の前に、つまり製品製造時または輸入時にその承認書に従って製品検査を一品一品行い、販売に必要と思われる数を適切な環境で在庫し保管します。それからユーザーである病院やクリニックに製品を出荷します。企業はこのように多くの工程を経て医療用機器や用具の事業を行っています。

販売後製品に関しての不具合などが起こった場合には販売会社がその製品使用者(医師や医療施設)に対応します。その後、我々患者に対して医療提供者を通じ改善のための適切な処置をすぐに行います。だからこそ、医療施設に働く医療従事者全ての方々が我々患者に安心して製品を使用する事ができるのです。自明の理ですが、こうした過程を経ていない製品、すなわち未承認品は、その製造もしくは輸入販売会社の責任外となります。それから、既に承認された製品でもその承認許可を得た会社以外で輸入された製品、つまり、海外で購入しハンドキャリィーで持って帰って来たり、直接海外から個人輸入した製品もこの法律の適用外となります。つまり、正規ルートからの購入でない製品はメーカーから医療従事者の方々を通じて我々患者になされるべき製品のサポートの対象外となります。


現在の課題:タイムラグ(内外格差)

「医薬品医療機器等法」によって我々が守られているという良い面がある一方で、承認申請及び取得等販売に至るまでの一連の流れに多くの時間を要することから、俗に「タイムラグ(内外格差)」と言われているものが発生するのは否めません。「タイムラグ」とは、諸外国と日本で医療用具や機器として上梓される時期に差が生じることです。新製品は諸外国で販売された後に日本で承認申請され医療用具や機器として販売を認めてもらう期間が必要なため、どうしてもこの時間差(タイムラグ)が発生します。これが日本国内の販売時期が諸外国より遅れる主たる理由です。海外で改良された新しい型の製品が販売されていても、日本ではこのタイムラグのため一般的にはすぐに治療に使用できないということも起こっています。特にまったく新しい概念で海外で開発された先進治療用具・機器の承認は、申請の際に企業側も行政側も参考にする日本での前例の製品がありません。その場合は、まず許認可を管轄する行政側がその製品の承認のために必要な基準作りから始めなくてはならないのです。よって時間差はより長くなりものによっては数年かかることもあります。従いましてそのような製品は、日本で承認をとれた時には既に諸外国では旧製品となってしまうこともあります。

このタイムラグについては何年も前から政府と業界団体が協力して議論しており、少しでも縮める努力を行っています。徐々に改善はしていますが今後とも多くの進展を期待したいところです。

それからもう一つ、会社側の事情としては承認取得に要する費用と市場での販売見込み額の兼ね合いという課題もあります。ありていに言えば、事業会社は承認取得を含めた投資金額と市場規模から予想される売上予定金額が見合わなければ、日本市場での販売の優先度を低くします。残念ながら最悪の場合、日本での製品上梓を見送ることになります。

とは言え、こうした日本になく諸外国ですでに流通している製品を使用する必要のある場合もあります。その場合医師が個人輸入という方法を用い、個人で所轄官庁に書類を提出しご自身で海外から輸入することもあります。医師の全責任のもと、治療を受けられる患者様の同意を得てからその製品を使うという対応をする事になりますので、やはり日本にある会社の責任外となります。

ページトップ