インプラント(人工歯根)について

人工歯根といわれるインプラント体そのものについてのお話です。ここでは「インプラント」と呼びます。

ひと口にインプラントと言っても多くの種類があります。インプラントとその関連製品を販売している会社のホームページには多種多様なインプラントが掲載されています。形状により数種類に分けられ、その形状ごとに長さや太さが違うものがあります。歯科クリニックなどのホームページを見て頂ければ、クリニック毎に様々なインプラントメーカーの製品を使っていることがわかります。

しかしここで、我々患者がインプラントの種類まで選べないのになぜ知る必要があるのか?と疑問を持つ方も多いのではないかと思います。しかしながら、先生がどのインプラントメーカーの製品を使用しているかは、治療後のご自身のアフターケアにも関わる重要な点なのです。理由は後でお話ししますが、我々患者は製品にも関心を持ち、インプラント治療を受ける前に知っておく方がよいと思います。そのために、これから多種多様なインプラントについてお話ししたいと思います。

日本国内のインプラントの販売元は3つに大別されます。それらは、1)100%外国資本の外資系企業の日本支社、2)日本の輸入販売会社、3)国内製造販売会社です。いずれの販売元も、直接もしくは歯科用品販売ディーラー経由で歯科医院や病院に製品を納入しています。日本のインプラント会社を含めて現在では20ぐらいのブランドが流通しているようです。それぞれ会社の歴史や販売期間に長短があり、それぞれが形状、長さ、直径(太さ)、表面性状の違うインプラントを販売しています。「表面性状」という言葉に馴染みが無い方も多いと思いますが、インプラントのネジの部分の表面に施されているコーティングの事です。コーティングは、金属であるインプラントと歯の骨の間で「骨にくっつく」というインプラントの性能を左右する大切な要素のひとつです。それからインプラントの種類ですが、カタログ番号全てを数えた事はありませんが、たぶん、数百ではきかないインプラントとそれぞれに合う支柱などの関連製品があります。

さて、ではインプラント手術の成功率ですが、インプラント製品の改良や医療技術の進歩などにより、現在では世界的に見ても95−98%ぐらいと言われています。この数字は多くの治療成績に裏付けられており、今までできなかった困難な手術への挑戦も含まれた数字です。こうした実状を考慮に入れてこの成功率を見ますと、インプラント治療は十分に安全性が確立されていると考えて良いと思います。ここでいう成功とは、インテグレーション」が完了し治療すべてが終了した状態です。 「インテグレーション」とは、インプラント(人工歯根)がしっかりと歯の骨にくっつく事、つまり歯の骨に固定され、抜けない、回らない等動かない状態になる事です。インプラントの種類は様々ですが、長い歴史のあるインプラント製品を使用した手術の成功率には大きな差は無いようです。

長い歴史を持つ欧米の製品に加えて、既に日本を含めたアジアの国々でも、独自開発による新しいアイデアを取り入れたインプラント製品を製造しています。その中の幾つかはすでに我国でも輸入販売されています。こうしたメーカーも今まで以上に開発に力を注ぎ、安全で確実な治療の向上へ貢献し、これから長きに渡り歴史を積み重ねて行くことを期待しています。製造販売会社は自分たちの製品コンセプトに従って製造しており、術者である歯科医師は多種多様なインプラントの中から患者様の症例に応じた製品を選ばなければなりません。それは、診断後の治療計画に沿ってそれぞれの症例に適したインプラント体の選択する事を意味します。


インプラントメーカー選び

本題に戻りますが、多くのインプラントメーカーが多種多様なインプラント体を供給していますが、患者自身が自分の判断で使用するインプラントを選ぶことはできません。ですが患者側から見れば、インプラントとその関連部品と人工歯は自分自身の口の中に一生と言って良いほど恒久的に存在し使用するものなのです。であるなら、まずは製造元として長期にわたって信頼できるメーカーの製品を使用している歯科医院を選ぶ事が重要だと思います。

信頼できるメーカーの最大のポイントは、将来長きにわたってインプラント体の部品の供給責任を担える体制があると言う事です。 例えば、人工歯をインプラントに固定する支柱が何らかの理由で交換が必要になった場合を考えてみましょう。必要な製品の在庫が身近に有りすぐに入手し治療することができるか?また、国内や海外の旅行中において滞在地域で必要な製品の入手に対応できる体制が取れるか?なども考慮する必要があります。

そして、他にも考えておかなくてはいけないのは、企業の吸収合併などで複数の会社の製品が統合され、現在流通している製品やその部品が無くなり、部品の入手が出来なくなる場合もあり得ます。それがご自身に使用されている製品だった場合は一大事です。部品が無く交換ができない場合は他のインプラントに入れ替える再手術をする必要があるからです。つまり、歯の骨に埋め込まれて既にくっついているインプラントを抜きとり、他のインプラントを埋入(まいにゅう)し直さなければならなくなります。こうした事態を避けるためにも、まずはインプラント治療後10年や20年を経ても、いやもっと長い間そうした製品在庫を維持できるメーカーの製品を使用している歯科医院を選んでいただきたいと思います。

さらに繰り返しになりますが、どこのメーカーのどのインプラントを埋入するかは歯科医師の事前診断による治療計画によって決まります。よく説明を受け我々患者自身がそのインプラントを使用する理由が合理的であると納得しないといけません。私ども患者は、これから先何十年も埋入されたインプラントが口の中で正常に機能することを当たり前のように望む訳ですから。


患者(患者情報)カードの重要性

インプラント治療後、一般に「患者(患者情報)カード」と呼ばれるものを必ずもらっておいてください。

他に呼称がありますが、これにはご自身に使われたインプラントなどの製品名、カタログ番号、ロット番号、使用箇所、日付などの情報が記載されています。この記録は将来必ず必要な時が来ると思います。インプラント学会などやインプラント業界ではインプラント実施施設にこうした情報を患者様に渡すように推奨しています。この患者情報があれば国内外を問わず他の歯科医院で診察してもらう際に、使用されているインプラント体と部品と人工歯の確認がとても容易になります。

実際問題として、すでに埋め込んでいるインプラント製品の会社名、製品名、形状、サイズなどを目視で確認することはできません。X線写真で見ても、インプラントの製品自体が小さく形の似通ったものが多いために判別しづらいのです。また、インプラントそのものが小さいために本体にはカタログ番号や製造情報などは書かれてはいません。これでは推測はできても治療に必須の製品確認はできません。この時にこうした「患者(患者情報)カード」と呼ばれるものが役に立つのです。この情報によって歯科医師はすぐに製品の種類やサイズ等がわかり、安心して的確な診断が行え、素早い処置が可能となります。

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